ボッティチェリの『春』と『ヴィーナスの誕生』の見方と意味を徹底解説!

イタリア・フィレンツェにあるウフィッツ美術館。多くの観光客が訪れるイタリアを代表する美術館の一つです。ウフィッツ美術館で特に人気があるのがボッティチェリの『春』と『ヴィーナスの誕生』です。ボッティチェリと2つの作品の見所と描かれていることについての解説です。

目次

はじめに

ボッティチェリの『春』と『ヴィーナスの誕生』は、ウフィッツ美術館で1番人気がある作品です。多くの観光客がこの絵画の前で自撮りしていて、ベストポジションでゆったりと見ることは難しいです。素晴らしい絵画ですが、観光客が多くいて、描かれている内容に興味がないとざっと見になってしまうので、予習をしておくことで短い時間ながら楽しむことができると思います。

私がボッティチェリの作品を知ったのは大学生の時に授業で学んだ時でした。期末試験には『春』に描かれていることを説明せよという問題があり、当時必死に勉強したことを覚えています。それから数年経ち実際に見た時は、あの時勉強したなぁと感慨深かったです。

※各作品の写真は直接撮影したものなので、ライティングやピントの関係で細かい所など見にくいものもあると思いますがご了承くださいませ。

サンドロ・ボッティチェリ

サンドロ・ボッティチェリは、フィレンツェ出身のルネサンス期を最も代表する画家です。本名は、アレッサンドロ・ディ・マリアーノ・フィリペーピ (Alessandro di Mariano Filipepi)と言いますが、日本人で本名を知っている人は少ないと思います。ボッティチェリというあだ名は、「小さい樽」と言う意味で兄が太っていたためつけられました。

『春』

『春』はイタリア語で「プリマヴェーラ」。1482年頃の作品で、6人の女性と2人の男性、目を隠したキューピッドが描かれています。神話の登場人物が描かれているので、名前を本やゲームなどで知っている、聞いたことがある人も多くいると思います。

春の訪れにまつわる寓話なので、シンプルなテーマかと思いますが、初めて大学の授業で絵画の説明を聞いた時は難しいと感じました。さまざまな解釈があり、世界でもっとも言及されい、議論の的となっている絵画の一つと言われているので、難しいと感じるのは自然なことですね。

全体的な構図は右から左に進んでいると言われており、時系列順に登場人物を見ていくことで物語を理解できるようになっています。多くの観光客がいると思いますが、サイズが207×319cmと大きいので絵画全体が見える少し下がった中央に立ち、右から左に見ると良いと思います。

古典神話の人物9人がオレンジとローレルの木立に花の咲く芝生の上で進んでいく様子が描かれています。

愛と美の女神ヴィーナス

中央にいるのがヴィーナスです。愛と美の女神ヴィーナスは貞淑な服装で他の女神たちから少し離れた位置にいます。

キューピッド

ヴィーナスの上にいるのがキューピッド。金色の弓を持ち、その弓矢で打たれると恋に落ちるとされていて、三美神の中央にいる女神を狙っています。そして、キューピッドが目隠しをしているのは恋は盲目ということを意味していると言われています。

三美神

ヴィーナスのような美徳を持つ3人の小さな女神三美神が輪になって踊っています。

マーキュリー

ヘルメットと翼のあるサンダルを身につけているのがマーキュリーです。ギリシア語でヘルメスという神々の使者かつ商人の神様です。ケーリュケイオンという名の杖を手に持ち、雲に触れている場面です。こちらに向かってくる暗雲を追い払おうとしているとされています。

ゼフィロスとクロリス

春を告げる西風の神ゼフィロスがクロリスというニンフ(妖精)を抱きしめて自分のものにするため連れ去ろうとしています。クロリスは、後にゼフィロスと結婚し、神の地位へと引き上げられ春の女神フローラになりました。クロリスの隣に描かれているのが春の女神フローラに変身した姿です。フローラは春の女神なので、花が描かれた洋服を纏い、足元の花も一番大きく咲いています。 

「春」のまとめ

複雑な構成の意味は今でも謎に包まれていますが、春」は愛、平和、繁栄を讃えています。フィレンツェ大学中央研究所の専門家の協力により46種類の植物が特定、説明されています。ボッティチェリによって正確に描かれている植物は、おそらく植物標本を使っていたと考えられています。細部へのこだわりは、ボッティチェリの「春」に対するアーティストのこだわりを裏付けていて、絵の具を塗る技術の高さからもそれがうかがえますね。

 人物にだけに目が行きがちな「春」ですが、実は細かく描かれた植物も見所です。

『ヴィーナスの誕生』

多くの人がヴィーナスと聞いて思い浮かべる絵がこのボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』だと思います。天空神ウラヌスから切り取られた生殖器が海に投げ込まれ、その時に泡から生まれたのが愛と美の女神ヴィーナスです。中世には描かれることがなかった裸婦の女神ですが、この作品から女神を通して裸婦を描く芸術が始まったとされており、文化的にも定術的にもとても重要な絵画です。

『ヴィーナスの誕生』は、左から右に時が流れる構成となっています。大きく3分割になっており、時間の流れがわかるように登場人物のそれぞれの役割が描かれています。

愛と美の女神ヴィーナス

愛と美の女神ヴィーナスは、綺麗な黄金の髪をなびかせて、右手で胸を左手で陰部を隠しながら、恥じらう表情をしています。ヴィーナスがホタテ貝から一歩地上に降り立つと綺麗な花が咲き乱れ、その体から滴る水滴が真珠となって転がり落ちたとされています。理想的で完璧というより、どこか自然な美しさを感じるヴィーナスの描き方が見所のつです。

海は「命の誕生」を意味しており、巨大なホタテ貝の上に立っているのは、豊穣、繁殖力の象徴だからです。日本のおせち料理に入っているホタテは、帆を立てると書くことから明るい未来への願掛けの意味があり、ホタテ貝は西洋でも日本でも良いことの象徴としての共通点があり興味深かったです。

西洋の神ゼフィロスと妻のフローラ

春を告げる西風の神ゼフィロスと妻の春の女神フローラは、愛や結婚の象徴とされ女神ヴィーナスの誕生を祝福しています。

春の女神フローラの周りには花が舞っています。

季節の精霊ホーラ

ヴィーナスに花柄のガウンを着せようとしているのが季節の精霊ホーラです。

『聖母子と3人の天使』

ミラノにあるアンブロジアーアナ絵画館には、ボッティチェリが1493年頃に板上に乳化作用を持つ物質を固着材として利用する絵具テンペラで制作した宗教画の『聖母子と3人の天使(Madonna del Padiglione)』があります。ミラノに行く機会があれば、カラヴァッジョ、ラファエロの作品も楽しめるアンブロジアーナ絵画館もおすすめです。

最後に

フィレンツェで必ず訪れたいウフィッツ美術館。多くの作品がありますが、その中でも気になる作品はあらかじめ予習をしていくことをおすすめします。宗教画は、【誰が、どんな場面で、どのように描かれ、何を表現されている】のかが見るポイントです。描かれていることがわかっていると実際に見た時に、感じるものが変わってきます。特に人気のボッティチェリの作品は、予習をしていきましょう!

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この記事を書いた人

イタリアに3度旅行で訪れ、その後ミラノでメンズ服のデザイン留学をした東京生まれ千葉県育ちの日本男児。実際に住んでみてわかったこと、旅行だから感じることをベースに記事を書いています。イタリアに旅行をしたい日本人、日本を旅行したいイタリア人がもっともっと増えてほしいなぁと思っています。

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